行動変革プロデューサーの西谷 信広です。
行動が人を伸ばし、企業、社会を伸ばすので、
まずは行動を変えましょう、を推進しています。
具体的には、個人、企業に向けて、主に営業分野
人材に向けた行動を変えていく独自開発した
トレーニング・プログラムを提供しています。
さて、ニュースで多くの方がご存知の通り、
東京、池袋で87歳の老人が運転する車が次々に
人をはねるという惨事が起きました。
2名の方がすでに亡くなられたとのことで、
ご冥福をお祈りします。
今回の事故を通じて強く感じたこと。それは、
企業の不祥事の背景との共通点です。
どういうことでしょうか?
老人が引き起こす事故と関係者
「アクセルが戻らなかった」と事故を起こした
当事者は言っているようですが、にわかに
信じがたい。これが正直な印象です。
米国でトヨタ車のアクセルが戻らないとの
事件が2009年以降発生しましたが、結局、
制御システムなどの不具合は一切見つからず、
和解して幕引きとなりました。
今回の池袋の事件では、本当にアクセルが
戻らなかったのかは現状としては不明です。
ただ、あまりに高齢者による事故が頻発
しているため、行政の早急なる対策が
望まれるところです。
さて、確かに事故を起こしたのは老人です。
しかし、誰にも止められなかったのでしょうか。
つまり、
“免許の返納もしない、させないまわりの問題”
が気になるのです。
別に、誰かを責める意図で言っているわけでは
ありません。ただ、実際、免許証は返納されて
おらず、相変わらず運転をしていたという事実です。
ちなみに、私自身も最近、峠のカーブを走って
いたら、目の前から突っ込んでくる車に、
ひやりとさせられた経験があります。
ちらっと運転している人間を見ましたが、
明らかに老人でした。わたしが避けたことで
事なきを得ましたが、下手をすると大惨事でした。
今回の池袋の事故を引き起こした87歳の老人は、
運転をそろそろやめようとしていた、との
報道がされています。
しかし、止めていなかったからこそ、
事故は起きたわけです。
免許を返納する、あるいは周囲が説得してでも
返していれば、今回の事件は防げたこと。
強くそう感じます。
防げたのに防げなかった(防がなかった)といえば、
企業における不祥事が頭に浮かびます。
高齢の社長が取り巻きの役員、役職者と共に、
何が正しいかを実行する代わりに、やりたいように
やって、最後は会社に大損失を負わせる。
これまでに、幾度となく繰り返されてきたことです。
無神経と無責任の連鎖
企業の不祥事は後を絶ちません。
いわゆる老舗企業と言われる東芝の粉飾決算。
そして、リクシルの内紛。
出光創業家と経営陣間の軋轢も記憶に新しい
ところです。
最近ではレオパレス21の施工不備問題や、
ダイワハウスさえも建築基準を満たさずなど、
まあ、枚挙にいとまがありません。
そしてこれ、どれもこれも一部上場企業、
というのですから、呆れて開いた口が
ふさがりません。
経営者がどの問題にもおおきく関わって
いたのは間違いなく、この点でもすごく呆れ、
そして情けない気持ちになります。
メタ認知力の欠落と責任の所在
自らを真摯に振り返ることができる人は、
先々の発生するリスクを理解したうえで、
まだ運転できる段階で免許証を返納する
でしょう。
自らを客観視しているからこその行動です。
「まだまだ大丈夫だ」などと、過信して
いる人に、免許証の返納はむつかしいでしょう。
「まだ、もうしばらく、運転するんだ」
そんな思いで運転しつづけ、結果的におおきな
惨事を引き起こす。
企業で起き続ける不祥事も、根っこは
まったく同じです。
「俺が言っているのだから、こうやれ」
「俺の意見だから、会社のためだ、だから、
数字を作れ」
明らかな違法行為、あるいは社会に知ら
れれば会社を貶め、株価を大きく下落
させることはわかることです。
よって、言われた部下の中には疑いを
持つ人はいるはずです。
しかし、結局従う。
結果、どうなるのかということは考えずに。
「考えたし、気にしていた」
そう答える人もいるでしょう。
しかし、本当に考えているなら、
決して容認し、言われたことを実行
するなど、できないはずです。
自らの能力を推し量ることのできない
上長とその部下。これはまさしく、
思考停止状態です。
メタ認知力の著しい欠落がまねく結果は
大きな損失を伴うことが多いのです。
免許証を返納しない老人。
運転は止めたほうがいいとわかって
いても言わない、止めさせない周囲。
そして、会社の為といいつつ犯罪行為を
部下に依頼する社長。そして、それを
悪いとわかっているはずなのに、止めない
社長の取り巻き。
老害が会社を腐らせるのだが...
東芝のケースでは、社内でいわれる
チャレンジの意味については、すでに色々な
ところで書かれています。
リーマンショックが発生した2008年から2014年
まで、約2,000億円超の利益水増しが当然の
ように行われていました。
原因の1つが、“チャレンジ”と呼ばれた
経営陣からの無茶苦茶な要求。
達成不可能を承知でチャレンジしろ、という
ことからついた名前のようですが、中には、
3日間で120億円の利益を出せなどという
ものもあったとか。
ビジネスに携わる人なら誰でもわかること
ですが、利益120億円ということは、
通常は1,000億円を超える売上が必要ですね。
なんとも、お世辞にも賢いとは言えない人たちが
“経営陣”面をして跋扈していた、ということです。
経営力ゼロなのに立場を返納せず、かわりに、
会社を窮地に追い立てる。
老人が免許証を手放そうとせず、事故を起こす
こととまったく同じ構造です。
たてて加えて、3日間で120億円の利益なんて
できるわけないだろと、押し返さなかった
側にも、責任はあります。
もし、明確に断っていたのなら、東芝の不祥事は
もう少し傷が浅く済んだのではないでしょうか。
「上司にたてつけないよ」という人がいますが、
本当にそうでしょうか。
りっぱな違法行為ですね、利益の水増しは。
当たり前ですが、きっぱり断るのは、社会人
としての、人としての務めです。
経営層に上がっている人間にも大いなる
問題があります。しかし、それを止めない
周囲にも責任はあるのです。
免許を返納しない老人も、無能経営者も同じこと
免許を返納しない老人は、十分運転できる
と大いなる勘違いをしています。
そして、老害経営者は、自分がスゴイと
思っており、権力で無茶苦茶をしています。
免許返納すべき老人も、経営者も、
共通していることがあります。
それは、誰も彼らにNOを突きつけないこと。
誰も止めないから、惨事が起きるのです。
レオパレスも、ダイワハウスも、
上層部がおかしな筋書きをつくったわけです。
そして、
「逆らえない」と自らに言い聞かせる部下が、
その片棒をかついだわけです。
誰が言っているかより何を言っているかが大事
社長から依頼されると、どんなに理不尽な内容
であっても、「わかりました」と受けてしまう
社員は相変わらず多くいます。
役員からの依頼でも結果は一緒でしょう。
言われたとおりにやろうとする理由は、
誰が言っているかを重視しているからです。
しかし、正しい事なのか、しっかり考えれば、
指示通りにしてはいけないという結論に達する
はずです。
思考停止に陥らず、真摯に事実と向き合い、
何が正しいのかをしっかり考え、
何を言っているのかを見極め、前に進むとことが
とても大切です。
東芝の件しかり、
レオパレスの件しかり、
そして、ダイワハウスの件しかり、
その他、色々な企業...
一度信頼を失うと、取り戻すのは大変です。
しかし、事実に基づいて正しく判断した
活動なら、多くの顧客を失うことなど
ありません。
つまり、真実に基づく経営をするほうが
将来は明るいわけです。
そして、わけのわからない依頼を突っぱねる
社員でいるほうが、企業の将来が揺らぎませんから、
よほど安心して生活ができるのです。
免許証を返納しない間違った行動により事故は
誘発されまず。そして、経営者の器のない者が
社長として間違った行動を起こすことから、
多大なロスが引き起こされます。
企業では、誰が言っているのかではなく、
何を言っているのかを周囲はしっかり考える
必要があります。
そして、
免許証の返納についても同様に、何が正しいのか、
しっかり捉え、老人に返納の意思がないのであれば、
周囲が返納を促すことはとても大切なことだと、
強く思います。