慣れと実力の差はどこから来るのか?
基本をしっかり身に付けていない人は、仕事に対する慣れと実力を混同している場合が多い。
だから、仕事に慣れると仕事ができると勘違いする人もいる。
では、実力と慣れは何が違うのだろう。
実力:とっさの事態にも正確に素早く対応できる力/能力
慣れ:習慣化していること。よって、対応できる範疇はルーティンワーク
本来は色々と経験するなかで、ルーティン以外にも十分対応できるスキルを身に付けていく
ものである。しかし、社員のメインスキルは慣れしかないのでは、と思わされる会社が存在する。
皆さんいい人たちなのだが、どうも仕事が予定どおりにすすまない。社会環境がかわっても
変化しようとしない。開発は常におくれる。他社をベンチマークはするが、あらゆることが
遅れてゆくので意味がない...
なぜだろうか?
仮にA社と呼ぶことにしよう。A社はまあまあの社会認知度を持つ。技術力もそこそこある。
だから、仕事を取りにいかずとも顧客から仕事の依頼がくる。結果、社員に焦りはない。
仕事があることはいいことである。しかし、実は低利益率の仕事が多い。けっこう難しい
仕事を安い価格で受注してくれと要求され、受けてしまう。
慣れだけの力だと創意工夫もしないし仕事をやり切らない
ちなみに、利益率の低い仕事が集まるのには理由がある。
競合他社に断られた顧客が最後に、A社に連絡をしてくるからだ。他社がみな断った
仕事を受けてしまうのだ。当然、収益性は低くなるのである。工夫で、少しは収益性が
高まる可能性はある。しかし、粛々と、いつもの方法でやってしまう。
低収益性でも仕事はある。だから、キャッシュはまわっている。給料はしっかり
支払われる。よって、社員は危機感を持たない。
方針修正だけでもおろおろする人たち
さて、A社に話を戻そう。A社でプロジェクトをまとめたことがある。
色々と検討を重ねて、新規事業の営業活動の方向性を出したのだが、すぐに修正を
発表したことがあった。もちろん理由があってのことだ。
「なんで変えるのですか。これじゃあ、朝礼暮改です。やる気がそがれます」と社員の方。
なるほど、修正はしないでくれと。そんなことされるとモチベーションが下がり集中できない、
ということである。
「社会にも変化がありますよね。変化を無視したり、変化に対応できないなら、仕事は
成功しません」と、私からはお伝えしました。
著名な芸術家である北王路 魯山人は、美食家としても有名であったが、彼は著書である
魯山人味道(中公文庫)の中でこういっている。
「低級な人は低級な味を好み、低級な料理とまじわって安堵し、また低級な料理を作る」
なぜ、変化を恐れるのか?
朝令暮改という言葉があるのはご存知だろう。
朝だした方針や命令を夕方には変えてしまうことであるが、これに対して方針が頻繁に
変わるからダメだ、などというようではいけない。
変化は、人に今までのやり方を捨てさせる。違うやりかたなんて誰も慣れていない。
それ相応の努力を求められる。実力を育むには、仕事に挑戦する必要がある。
収益性の低い仕事ならば、どうすれば収益性をあげられるか考えないといけない。
今までの仕事のやりかたも変える必要がある。こうした柔軟な姿勢と実行力があって、
実力は身についていく。
慣れにひそむ危険を知る
慣れは、「これでいいや」という発想を生む。
方向修正などできるはずもない。つまり、将来を見据えるなどそこには存在しないのである。
突然、噴火しても、どうしたらマグマを止められるかは考えず、いつもどおり出社するような
ものである。
慣れは本来ルーティンにしか使えない。ところが、長年つとめている人には、しっかり考えて
働いていると錯覚している人が意外に多いものだ。収益性の低い仕事ながらも受注でき、
納入してお金をいただくことで満足してしまう。
なぜ、一流は変化を歓迎するのか?
朝令暮改は間違いではない。考え抜いた結果として朝一番に指示したことも、その日のうちに
変わる場合がある。
方針に影響を与える何かが発生することはない、と、いったい誰が言い切れるのだろうか。
見る角度を変えれば、方針を変えずに進めたら、努力がすべて水泡と帰す可能性が高くなる
だけなのである。
朝礼朝改もあっていい。午前中に変化を余儀なくされる問題が発生したら午後からの方針を変える。
必要なことである。
一流のビジネスマンはみな〇〇さを持っている
朝令暮改でも朝礼朝改でも、まずは文句を言わずやってみる謙虚な姿勢が大切である。
慣れだけで仕事はできないのだから、変化に身をおき、その中で色々な経験を積むことはとても
大事である。変化の中でもまれることで、実力は育つ。評論家になって朝令暮改はろくでもないとか、
そんなことをいってみても、幼稚さが増しても、実力が増すことはないのである。
ならば、幼稚さをヨシとせず、真摯に方針に取り組み、自己認識力の低い人と群れず、わからないことは
素直に質問する。そして、着実に進む。
一流を目指す人は皆さん謙虚である。
周りの雑音に惑わされることなく、素直になってみよう。そして実力を高めることに注力しよう。